投稿日:2023.10.7
上顎を拡大して非抜歯で矯正できる!MSE矯正の治療方法と流れを解説
MSE矯正は、大人の方でも「上顎を拡大して歯を抜かないで歯並びを整えられる」という矯正法です。
この記事では、MSE矯正のメリット・デメリットや適応症、
治療の流れなどについて『横浜駅前歯科・矯正歯科』が解説していきます。
横浜市周辺で「 歯を抜かないで歯並びを矯正したい!」とお考えの方は、ぜひご覧ください。
目次
非抜歯で上顎を拡大できる「MSE矯正」
MSEは『Maxillary Skeletal Expander(上顎骨拡大装置)』を略したもので、骨格的に上顎を拡大する矯正方法です。
別名『MARPE(Miniscrew Assisted Rapid Palatal Expansion)』とも呼ばれ、
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の矯正科Won Moon教授によって開発されました。

通常、歯を並べるためのスペースが足りない時には抜歯が必要になりますが、
MSE矯正では大人の方でも非抜歯で歯並びを整えられる可能性があります。
どうやって上顎の骨を拡大する?MSE矯正の仕組みとは
上顎は、左右1つずつを合わせた2つの骨からできており
『正中口蓋縫合(せいちゅうこうがいほうごう)』という「骨の繋ぎ目」で結合しています。
正中口蓋縫合
子どもの頃はこの繋ぎ目がまだ癒合していませんが、成長と共にしっかりとくっついていきます。
そのため、成長期を過ぎた大人は「上顎の大きさを拡げることは難しい」とされてきました。
従来の拡大装置は成長期にあるお子様を対象としており、大人は適応外です。
上顎の成長が完了している場合は、骨を切るなどの手術が必要になります。
ところがMSE矯正であれば、大人の方でも上顎の拡大が可能です。
上顎の骨の繋ぎ目の左右に2本ずつ『歯科矯正用アンカースクリュー』と呼ばれる計4本の小さなネジを埋め込み、
力を加えることで骨を離して隙間を作ることができるからです。
隙間の部分に新たに骨が作られることにより、上顎を大きく拡げていきます。

骨を拡大する装置(MSE)

主に歯を外側に押して拡大する装置(緩徐拡大装置/拡大床)

主に骨を拡大する装置(急速拡大装置)。歯を外側に押す力もかかる。
MSE矯正のメリットとデメリット
MSE矯正には、次のようなメリット・デメリットがあります。
MSE矯正のメリット
①大人もできる
大人や顎の成長が完了した方でも行うことができます。
②歯を抜かなくて済む
上顎を拡げてスペースを作るため、今までは抜歯が必要だったケースでも、歯を抜かないで矯正治療できる可能性があります。
③治療期間が短縮できる
歯を並べるために必要なスペースを効率良く確保できるため、従来の方法よりも治療期間が短くなる傾向があります。
④歯肉退縮のリスクを軽減できる
上顎の骨を拡げる装置には、MSE矯正の他に以下のようなものがあります。
・緩徐拡大装置(かんじょかくだいそうち)/拡大床(かくだいしょう)
歯を外側に動かすことで歯が並んでいる列を広げ、歯を並べるスペースを作ります。
・急速拡大装置(きゅうそくかくだいそうち)
上顎の骨を拡げてスペースを確保しますが、同時に歯を外側に押す力も加わってしまいます。
上記の2つは歯を外側に押す力も加わるので、歯が外側に大きく傾斜してしまったり、
歯を支える顎の骨(歯槽骨:しそうこつ)にダメージを与えてしまったりすることがあります。
そのため歯ぐきが下がる「歯肉退縮」を起こすことがあるのです。
しかしMSE矯正は歯に力を加えずに上顎を拡げられるので、歯肉退縮が起こりにくくなります。
⑤後戻りが少ない
MSE矯正は骨格的な問題からの解決が期待できるため、後戻りが少ないというメリットがあります。
⑥バッカルコリドーを小さくできる
バッカルコリドーとは、笑った時に歯列と口角の間にできる空間(黒い影)のことです。
バッカルコリドーが小さいと華やかに、大きいと奥ゆかしく優しい印象になります。
赤◯:大きいバッカルコリドー青◯:小さいバッカルコリドー
バッカルコリドーはバランスが大切で、小さ過ぎると人工的で不自然に、反対に大き過ぎると暗い笑顔の印象を与えてしまいます。
上顎の小さい狭窄歯列や、口元を引っ込めるために抜歯をするケースなどでは、
バッカルコリドーが大きくなりがちですが、MSE矯正によって小さくすることも可能です。
⑦体への負担が少ない
従来、顎の成長が完了している大人が上顎を拡げるためには、口腔外科などでの外科手術が必要とされてきました。
手術は入院した上で全身麻酔をして行われるため、身体的な負担はもちろんですが、
スケジュール調整をしなければならないという点も問題になります。
しかしMSE矯正は、矯正歯科で部分的に麻酔をして『歯科矯正用アンカースクリュー』を埋め込むだけで済みます。
手術の必要もなく短時間で終了するため、患者様のご負担が少ない方法だといえるでしょう。
⑧睡眠時無呼吸症候群の改善に繋がる
上顎の骨が拡がると、睡眠時無呼吸症候群が改善されることがあります。

例えば、狭窄歯列では舌が収まるスペースが狭いため、舌が喉の奥に下がって気道を塞ぎやすくなります。
この状態は『舌根沈下(ぜっこんちんか)』と呼ばれ、いびきや睡眠時無呼吸症候群の要因の一つです。
MSE矯正で上顎の骨を拡げると、スペースが確保され舌が収まるため気道にゆとりが生まれます。
それがいびきや睡眠時無呼吸症候群の改善に繋がるのです。
※歯並びや舌の位置と睡眠時無呼吸症候群については、下記の記事もご覧ください。
【歯並びと睡眠の関係とは??】
【あなたの舌はどこにくっついている?舌の正しいポジションってどこ!?】
⑨口呼吸が改善される
上顎の骨を拡大すると、鼻腔も大きくなります。鼻呼吸がしやすくなり、口呼吸が改善されることもあります。
口呼吸はお口や身体に様々な悪影響を与えるため、心当たりのある方は早めに改善することが望ましいでしょう。
※口呼吸が及ぼす悪影響についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
【”口呼吸”してはいけないってホント?】
MSE矯正のデメリット
①慣れるまで違和感がある
装置をつけた直後は違和感が生じます。
話しにくさを感じる方も少なくありませんが、通常は徐々に慣れていきますので心配いりません。
②食事や歯磨きに支障がある
MSE矯正では、上の顎の骨に『歯科矯正用アンカースクリュー』を埋め込み、そこに装置をつけます。
固定式の装置のため、食べ物が絡みやすい、歯が磨きにくいなどのトラブルが生じてしまいます。
歯磨きが不十分だと虫歯や歯周病、口臭の原因になるため注意しましょう。
③痛みが生じることがある
痛みの感じ方には個人差がありますが、力を加えて骨を拡げていくため、痛みが生じることがあります。
④一時的にすきっ歯になる
最終的には矯正治療により閉じますが、一時的に上の前歯の間に隙間ができてしまうことがあります。
一時的に上の前歯に隙間ができる。
⑤鼻が大きくなる可能性がある
上の顎を拡げると、鼻腔が広がり鼻呼吸しやすくなりますが、その分鼻が横に大きくなる可能性もあります。
こんな人に向いている!MSE矯正の適応症
MSE矯正は、次のような場合に向いています。
狭窄歯列(きょうさくしれつ)の方
理想的な上顎の形はU字型ですが、狭窄歯列はV字型になります。
狭窄歯列
上顎劣成長(じょうがくれつせいちょう)の方
上の顎の骨が十分に成長しなかった方にも向いています。
外科矯正の適応となる可能性がある方
骨格的な問題があっても、外科矯正の適応となるかどうかのボーダーラインの場合は、
MSE矯正により外科手術を避けられる可能性があります。
狭窄歯列で下顎が前に出ている方
歯列が狭いことが原因で反対咬合になっている方も適応となるでしょう。
狭窄歯列が原因で下顎が前に出ている
拡大により非抜歯で矯正できる方
上顎の骨を少し拡げてあげれば、非抜歯での矯正治療が見込める方にも有効です。
MSE矯正を行う際の流れ
MSE矯正を行う場合には、一般的に下記のような流れで治療を進めていきます。
①カウンセリング
患者様のお悩みやご希望をお伺いした上で、MSE矯正の特徴などをご説明いたします。
②検査・診断
MSE矯正をご希望される場合は、矯正歯科で精密検査を受けていただくことになります。
レントゲン写真やお口の写真・歯型などを取って患者様の歯並びや骨格の状態などを確認し、診断を行うためです。
診断の上、MSE矯正の適応となるようであれば治療計画の立案をします。
③MSEの装着
治療計画にご納得いただき装置が用意できましたら、治療開始です。
部分的に麻酔をして上の顎の骨に『歯科矯正用アンカースクリュー』を埋め込み、MSEをつけます。
青〇:ミニスクリュー 青:ミニスクリュー

④上顎骨の拡大
MSE装着後は、回転レンチを使って上顎の骨を拡大していきます。1日4回前後を目安にご自分でナットを回していただきます。
回転レンチ 黄色◯:ナット 回転レンチでナットを回す 黄色◯:ナット 矢印方向へ上顎の骨を拡大



※MSEによる上顎骨拡大の経過の一例のCT画像(20代半ば女性) 拡大開始:2つの骨は正中口蓋縫合でくっついている 拡大開始から約2週間経過:正中口蓋縫合が離開してきている 拡大開始から約1ヶ月:正中口蓋縫合が十分に離開した


⑤矯正治療
適度な大きさに上の顎の骨を拡げたら、矯正装置を用いて歯並びを改善していきます。
矯正装置には「ワイヤー矯正(表側矯正)・裏側矯正(舌側矯正)・マウスピース型矯正」などがあり、
患者様の歯並びの状態やご要望を考慮した上で決定します。
治療期間は平均して1〜2年程度です。
理想的なU字型の歯列

※上顎の骨を拡げた部分に新しく骨ができあがるまでには、半年ほどかかります。その後、MSEを除去します。
⑥治療終了・保定
歯並び・噛み合わせが整ったら矯正装置を外し、歯並びを安定させるために必要不可欠な『保定装置』を装着します。
※保定装置については下記の記事で詳しくご説明しています。
【保定期間中に使う「リテーナー(保定装置)」って?種類や使い方について詳しく解説します!】
MSE矯正の費用はどのくらい?
MSE矯正は、健康保険の適応外です。
自由診療になるため、治療を受ける歯科医院によって費用は異なります。
カウンセリング時にしっかりと確認しておきましょう。
当院では、通常の矯正治療の料金にMSEの料金を追加する形で¥33,000(税込)頂戴しております。※2025年10月1日時点
矯正治療費については【各治療の価格・料金表】でご確認いただけますが、お電話やカウンセリングなどでもお伝えしております。
どうぞ気兼ねなくお問い合わせください。
MSE矯正が自分に適しているかわからない方は当院までご相談ください
今回は、MSE矯正のメリットやデメリット、また適応症や治療の流れなどについてご説明しました。
MSE矯正は、大人の方でも非抜歯で歯並びを整えられる可能性がある矯正です。
MSE矯正にご興味のある方や検討されている方は、ぜひ一度歯科医院で相談してみてください。
横浜駅前歯科・矯正歯科では、歯並びや矯正治療に関するお悩みのご相談を随時受け付けております。
「MSE矯正が気になっているけれど…」「自分にどんな矯正方法が合うのかわからない」という方も歓迎しています。
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医薬品副作用被害救済制度の対象外となることがあります。
※矯正歯科治療は公的医療保険適用外の自費(自由)診療となります。




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